泣きやんだのだろうか、里穂が僕の胸から顔を話す。そしてジッと見つめ合うと、

「私にあの頃を忘れさせて。」

いきなりの事に気が動転する。

「どうやって。」

何をすればいいかわからない僕はただ聞き返すぐらいしかできなかった。

「私を抱いて。」

唐突なその言葉の意味を理解するのに少し時間がかかる。

「あの時のことを忘れられるくらい私をかき乱してほしい。」

頭がパニック状態になる。

「な、何言ってんだ。冗談だろ。」

「私は本気だよ。祥になら別になにされたっていい。だから、ねぇ。私が好きだったんでしょ。」

雨で服が濡れている。

透けた服から、下着をつけていないことがわかる。

極めつけは、大人顔負けのスタイル。

まさに最高のシィチュエーション。

まだまだ幼いとは言っても僕だって男、思わずとも手が伸びる。

しかし途中で手を止めて反対を向く。

「何でだめなの私よりきれいな人はこの市にはいないよ。」

確かにそのぐらい言ってもおかしくないぐらい、綺麗な女の子だとゆうことはわかっている。

「そうだと思うよ。でも、僕には大切な人がいるんだ。その人に嘘をつくようなまねはできない。」

後ろで里穂が立ち上がる。

「やっぱり遅かったかな〜。音楽室ではなしてるのを聞いたときに、まだ入れると思いながらも、もうだめかもしれないとも思ってたんだ。でも止まれなかった。まだ可能性があったから。」

クスンクスン

また泣いている声が聞こえる。

「自分を責めなくてもいいよ。僕はその行動を避難したりしないよ。」

「ありがとう、祥。私もなんだか楽になった。気持ちを聞けてよかった。じゃあ、バイバイ。」

そう言って里穂は路地を走り去っていった。

雨は止んでいたしかし気分は晴れなかった。

相手を悲しませないようにと思ってやったことが、反対に苦しめる事になっていたなんて。

やりきれない思いを胸に、僕は境内に腰を下ろす。

優しさだけじゃすべてを解決することはできない。

今自分を責めているであろう少女の心をどうしたら救う事ができるだろうか。

悶々としながらも境内から腰を上げて帰路についた。