その気持ちを察してか、里穂は話し出した。

「昔私が告白した時の事よ。あなたは自分でなんて言ったか覚えてる」

「覚えてるよ。」

小学校生活の中でも鮮明に覚えていることの一つ。

忘れるわけがない。

「僕が君を守るよ。」

あの頃は付き合うとゆう事をよくわかっていなくて、いじめから守ってほしいと言っているのかと思っていた。

男の子なら誰しも正義のヒーローになりたいと思っていただろう。

僕はそれになれると思って、付き合うことに頷いた。

あの頃の事が頭ので蘇った。

「僕が君を守るよ。そう言って祥は私のクラスに来てでも、いじめっこから私を守ってくれた。でも転校の話をした次の日、つまり転校する1ヶ月前にいきなり別れようと言ってきた。それから、あなたが私を守ることはなかった。私はまたいじめられたわ。祥がいなくなるのを待っていたかのように・・・それなのにあなたは笑っていた。私を守ろうとせずに。だからあなたを追い詰めようとしたわ。私が追い詰められたようにあなたを・・・あなたを失いたくなかったから。」

さっきの発狂したような動きが嘘のように、静かに淡々と話す。

「どうして、どうして最後まで守ってくれなかったの。」

うつむいていた顔が上げられる。

目には涙だろうか、雨だろうか、とにかく水がたまって目からこぼれていた。僕の胸に顔を埋めてすすり泣いている。

「ゴメン。言い訳になるかもしれないけど聞いてほしい。」

顔を胸につけたまま首だけで頭を上げてこちらを見る。

「転校の話を聞いたとき僕も寂しかった。最初は別に好きじゃなかったけど、別れるときには好きになっていた。だからこれ以上一緒にいると別れがさらに苦しくなると思って早めに別れようとしたんだ。まさかそんな事をされていたなんて、それに僕をそんなに思ってくれていたなんて。」

はなしているうちに僕の目からも涙と雨が混ざった物が流れていく。

「僕はバカだった。君を最後の最後に救うことができなかったなんて。」

しばらくの間雨の音だけが周りを支配していた。