髪をヘアピンで止めて、薄めの長袖長ズボンを着た姿が風に揺れて大人っぽさを際だたせている。

「話って何。わざわざこんなところまでつれて来て、私を襲うつもりかしら。」

相変わらず微笑を浮かべて僕を見る視線にはなんだかとげがある。

「今日の帰り道に、愛花・・福井さんが高校生に襲われる事件があった。」

「ふーん、怖いわね、私も気をつけなきゃ。」

全く白々しい。

「あれを仕掛けたのは里穂なんじゃないのか。」

いきなり直球な質問をぶつける。

「どこにそんな証拠があるのかしら。」

微笑を浮かべたまま、僕の言葉を受け流す。

「ちょっと訊いたら素直に答えてくれたよ。里穂のお兄さんに命令されたってね。今度からは頭の回る奴を使うことをおすすめするよ。」

次は僕が薄ら笑いを浮かべる。

本当は学年しか知らないが、はったりをかましてみる。

「ちっ。」

舌打ちした里穂からは、もはや微笑は消えていて、怒りの形相になってきた。

「なーんてね、嘘だよ。実は誰から命令されたかとか知らないんだ。はったりをかけただけさ。でも、これではっきりした。」

里穂は唖然とした表情から、また怒りの形相に戻っていった。

僕は内心してやったりと思って握り拳を作る。

「どうして私が怪しいと思ったの。」

何事もなかったように僕に訊いてくる。

「誰に命令されたかはわからなかったけど、学年をしゃべってくれて、里穂の兄貴の学年と同じだったことと、僕達は多分学校を最後に出たのに、あいつらは待ち伏せていた。誰でもいいのなら、もっと別の人がいたのに、だからあいつらは最初から愛花を狙っていた事になる。」

僕は一呼吸置いてまた話し出す。