誰もいない道を歩く。

大通りから細道に入ったこの辺は住宅街で夜はほとんど人気が無く、家の明かりが街灯の明かりない道を照らす。

路地を曲がって、曲がって、すると周りより大きい家。

豪邸のようにも見えるその家の玄関の前で止まってインターホンを押す。

表札には高木と書かれている。

キンコーン

大きい家の割には普通の家の音と変わらないよく聞く音がドアから少し漏れ静けさを切り裂く。

パタパタパタ

周りが静かなので普段聞こえない音が聞こえてくる。

ガチャ

「あら、祥。こんな遅くに何か用かしら。」

ドアを開けて僕の顔を見るなりクスリと鼻で笑っている。

すべてを知っているように。

「少し話がしたい。ここじゃなんだから、外で話さないか。」

「良いわよ、ちょっと先に行ってて。」

一度家の中に入っていく里穂をみながら、

「いつもの場所だから。」

と、一言だけ言い残して、いつもの場所へ向かう。

いつもの場所というのは、もう一本路地を曲がったところにある小さな神社のことだ。

この場所は行き止まりで通り抜けできないことと、路地の最奥地と言うこともあってめったに人が来るところではない。

少なくとも僕は、ここに来た人を見たことがない。

「久しぶりだな。」

少し古い木と土のにおいが混ざったどこか懐かしい空気を吸い思わず声が漏れる。

しばらく空気に酔いしれていると、白いカーディガンを羽織った里穂が歩いてきた。