彼氏は支えが無くなり後ろに倒れそうになる。

「じゃあ、帰ろうよ。」

差し出された手をつかむ。

つかんだ手は柔らかく細い。

何より、痛い思いをして守ってあまりあるほどに温かだった。

「家まで送ってあげようか。」

愛花が僕の足もふらつく身体を支えて言う。

「普通は僕が言うはずなのに。」

泣けてくる光景だ。

「まぁ、いいじゃん。男女平等だし。」

ニコニコしながら僕を支える愛花を見て自然に顔がほころぶ。

「でも、一人で帰るから別にいいよ。」

重要なことを思い出して、せっかくの申し出を断る。

「どうして。」

愛花が奇妙な表情を見せる。

「どうしても決着をつけなきゃならない人がいるんだ。」

愛花の支えから離れて一人で立つ。

「これは俺が立ち向かわなきゃならない壁だから、愛花を連れていっても意味がない。弱い自分との決別のためにも、一人で行かせてほしい。」

そう告げると、僕はゆっくり歩き出す。

「私は、ずっと祥の味方だから。」

後ろから、彼女の言葉が後押ししてくれて、足が軽くなった気がする。

僕は手を上げて腕を振り、ゆっくりとした足で、一連のボスの元へと進む。