背中合わせで顔が見えなくて本当によかった。

こんなに恥ずかしい顔を見られないで済む。

「祥が守ってくれたおかげで、傷一つつかなかったし、何にもされなかった。本当に助かった。」

何だそうゆう事だったのか。

自分だけ変な方向に話の意味を持っていった事を情けなく思う。

「何で帰らなかった。」

少しムスッとした物言いで問いただす。

「心配だったから。」

最近孤独だったせいか、やけに胸にしみる。

「捕まったら、次こそやられてたかもしれないんだぞ。」

声を荒げてしまう。

せっかく逃がしたのに、それが無駄になったことに対してイラだっているのかもしれない。

「そんなことよりも、祥が心配だったんだもん。だって、祥は私の彼氏だよ。一番大切で失いたくない人なんだから。」

突然の叫びが、暗闇の自転車小屋や街灯の小さい光に照らされた道路を伝う。

言った愛花も言われた僕もなんだか恥ずかしくなる。

「えっと、ゴメン。そんで、ありがとう。起きたときに愛花がいてくれて本当にうれしかった。」

躊躇いの間が空く。

「でも、大切な彼女を傷つけられたくなかったんだ。そこはわかって欲しい。」

《彼女》

という言葉が僕の体をさらに熱くさせる。

「うん、わかってるよ。そして嬉しい。」

その言葉を言い終わると、彼女はすくっと立ち上がった。