合唱コンクールまで、後一週間となった。

相変わらず里穂はなにもしてこない。

しかし、昔のことを知る人間から噂が広まったのだろう。

慎也、愛花、ひろみの三人以外は、僕に話しかけようとしなかった。

おたよりを作っている時も、他の奴らは、係の仕事をサボってでも、僕の近くに来たくないようだ。

「昔あって慣れてるけど、やっぱりきついな。」

僕が落ち込んでる姿を見て、

「大丈夫、私たちがついてるし、おかげで二人っきりになれるんだもんね。」

確かに避けられる事は苦しいけど、愛花と二人だけの時間がとっても増えたのはうれしい。

「じゃあ、書き終わったし、伴奏の練習でもやるか。」

放課後の練習は、各クラス順番に練習する。

今日は僕たちの順番だった。

「じゃあ練習しよ。」

愛花が伴奏を始める。

小学校から通っているだけあって、とてもうまい。

「うますぎて、失敗しないんじゃない。」

なんて言うと、

「もぉ、そんなにうまくないよ。」

と、照れて恥ずかしがる。

「可愛いなぁ。」

ピアノの音で聞こえないぐらいの声で本音を出す。

僕は慎也のように

[好きだ、好きだ]

連呼できるほど軽い奴じゃない。

でも愛花のいろんな姿を見て、知った。

愛花のかっこわるい姿を見たはずなのに、前よりも目で追うことが多くなった。

今も、聞こえてないからと言って、

「かわいい。」

なんて言葉を言うなんておかしい。

「僕は・・。」

ピアノの音で消えるように、

「愛花が好きなのかなぁ。」

ピアノの音が鳴り止む。

「今、口が動いてたけど、なにか言ったの。」

僕はドキッとする。

「いや別になんにもないよ。」

「ほんとに〜。」

愛花が疑っている。

(でも、なんだか楽しい。)



しかし、この光景を見られていることに、僕たちは気づいていなかった。

覗いているのは、モデルのような顔の女の子。

「一週間の情報収集と今のこの光景で決まったわ。」

鋭い眼光で、音楽室の中を見つめる。


「標的は、」

ニタァと笑う。

「福井愛花。」

その言葉を僕たちは知らない。