「こんにちは。高木里穂と言います。昔この市に住んでいたことがあるので知っている人はいると思いますが、よろしくお願いします。」

里穂を知らない奴らは、

[綺麗]

とか、

[可愛い]

とかいっているが、

知っている奴は、ずっと押し黙ってしまっている。

「本当に来やがったぜ。しかも同じクラス。」

慎也が後ろを向いて僕に言う。

「あぁ、そうだな。」

素っ気なく返す。

「でも、本当にきれいな人だよね。」

愛花がうらやましいそうに見る。

「そうですね、あれが悪魔の女とは思えませんね。」



「合唱コンクールまで後二週間。今から係り決めするから静かにしろ。」

先生の一声でみんなしゃべることをやめる。

里穂は僕たちからは反対の位置にいる。

係りを決めるときも、僕と同じ係りにはならず別の係りになった。

僕は愛花と一緒に今日の反省とかを書きみんなに配布する。

[おたより係り。]

慎也たちはラジカセを持ってくる係りに。


指揮者は僕

伴奏者は愛花

大きい紙に、歌詞を書く係りになった。

(なぜ別の係りに、なったんだろう。)

不審がりながらも僕のことをあきらめたのかもしれないと、明るく考えた。