1・2ゲームが終了した。

1ゲーム目は、祥ががんばって取ることができたけど、2ゲーム目は、リターンすらまともに返せない俺が足を引っ張り取られる。

「くっそ。」

足を引っ張っている自分に苛立ちの声を漏らす。

俺はサーブを打っても入らないし、入ったとしても、ラリーを続けることができない。

まさに試合になっていない状況で後1ゲームまで追い込まれた。

コートチェンジの一分の休憩時間にベンチに座って自分の情けなさを責める。

不意にバックネットの方を振り返ると、ひろみが青い顔でこっちを見ている。

(自分を責めてるんだろうな。)

ひろみの気持ちを考えると、俺の心も苦しくなる。
そのとき、何か熱いものがこみ上げてくる。

ひろみの顔を見たせいだろうか、体の中で何かスイッチが入ったような気がする。

「祥、悪いな。覚悟決めたから、やっちまうわ。」

靴を脱ぎテーピングを外す。

その姿をちらっと見た祥が言葉を返す。

「それがお前らしいと思うぜ。・・バカやろう。」

俺達は二人同時に立ち上がる。

「いっちょ、ひねってくるか。」

俺のいつものかけ声に笑みを浮かべて祥は答える。

「ああ。」