僕はただ前だけを見て走り出した。

風が頬を叩き、さっきまで聞こえていた応援や歓声が急に聞こえなくなった。

(もしかして僕は何か失敗したんじゃないか。)

(このわずかな間に抜かれそうになっているのではないか。)

いろんな思いが頭の中でぐるぐる廻っている。

最初のコーナーにさしかかったとき、ふと応援席をみるとみんな口を開けて声を出しているように見える。

それはただ僕が集中していて聞こえないだけだった。

少し目線を横にやると二位の人が斜め後ろにぴったり付いてきている。

(なにしているんだ僕は、迷っている暇があったら少しでも速く走るんだ。)

(いけ・・・)

(いけっ・・・)

(いっけーーーーーーーっ。)