「話したら何か変わるか?お前は寧々を倒せるのか!?呉羽は守れるのかよ!知ったような口聞くんじゃねえよ…っ!」
それまで聞くことのなかった
利津の苦しみを奈央は初めて知った。
「そんなつもりじゃ…!」
「呉羽の連中も、いつまでもあたしに甘えてるんじゃねえ。あたしは直じゃねえんだよ」
―…
その言葉を聞いた瞬間、
利津の全てが分かった気がした。
言葉にならない。声が出ない。
―利津は、直と似ているからって
彼女の重荷を背負わされたり、
頼られたりすることに、苦しんで
いたんだ…
喧嘩して直の代わりにしか
生きれないことに、不満もあった
のだろう。奈央は鳥肌が立った。
「あたしに関わるな!」
利津はそれだけ言うと、走って
どこかへ行ってしまった。
奈央はその場で固まった。
「あたしも…行かなきゃ♪」
ユウの隣にいたナジカが言う。
笑顔で拳を握った。
「喧嘩でもするんすか?」
「まだ厄介者が残っててさあ。
直の双子の姉だっけ。あたしを
恨んでるみたいなんだよ~」
「呉羽の人間で、あんたを憎んで
ない奴なんていないっすよ」
「お前もか…悲しいな♪」
ナジカは笑いながら去った。
ユウは睨むようにナジカを見つめた。