心なしか、直は母親と
仲が悪いみたいで全然話して
いなかった。直の心が、
少し分かった気がした。
施設に入ってからの日々は
派留を癒させてくれた。
これまで触れなかった友情や
愛情、全てを知ることが出来た。
ある日。
施設に電話がかかってきた。
それは利津からだった。
「利津?久しぶりっ!」
「…派留…」
「……?利津?」
元気が無いその声に派留は何か
あったのだと感じざるを得なかった。
話題を変えようと、直の話を出す。
「直から聞いたんだけど、呉羽校の
てっぺんになったんだってね!凄いね」
「…死んだんだ」
「え?」
「直は死んだ」
ーその夜、利津に案内されて
派留は直を見に行った。
病院に行くと、小さな棺の中に
白い顔をした直が見えた。
「直」
唐突に出た一言だった。
「何で寝ているの?どうせ新しいギャグ
なんでしょ…?顔も白くなっちゃって…、
どれだけ手の込んだ演技…」
派留はその場でしゃがみこんだ。
頬に伝うものが何なのか分からない。
利津は真剣な眼差しをしながら涙を流す。
彼女は直の頬を手で触った。
ー冷たい。
唇の色も無くなりかけている。
そのとき派留は実感した。
直にはもう、会えないんだ。