『いまはここにいて良かったと
思えるよ。直に会えたから』
『馬鹿野郎…』
派留の心臓は年を重ねるたびに
症状が軽くなっていた。
それでも、彼女の心の闇は
深くなる一方なのだろう…。
出会って3日後、直は提案した。
『なあ、入院費ならうちが免除する
から、近くの施設に入ったらどうだ!?』
『施設?それは、楽しいの?』
『ああ!今より安全だし、飯も絵本も
友達も沢山居るんだぜ』
『へえ!行きたい!…けど、直に
迷惑をかける訳にはいかないよ…』
波留は申し訳なさそうに、下を向いた。
直はそんな派留を正面から見つめた。
『いいか。誰にでも幸せになる
権利ってのがあるんだよ。お前は
法律違反だ!あたしの言うとおりに
しなきゃ捕まるぞ!!』
『そうなの!?それは嫌だ~!』
『だったらあたしに従え』
直はすぐ家に電話した。すると
病院にやってきたのは厳しそうな
面をした母親らしき人物と、
直に良く似た幼い少女だった。
話を聞いていたみたいで
母親は派留の頭を撫でながら
優しく言った。
『辛かったわね…』
まるで自分の母親のようで、
派留は心から淋しいと思った。