『体、弱いの?』
まだ小学5年生の派留が話しかける。
初めて派留と直が出会ったとき。
それは病院だった。
直は中1のころ肺炎で入院したときが
あり、その時隣のベッドで寝ていたのが
派留だったのだ。
『ちょっとした肺炎だよ!お前は
何で入院してんだ?』
直は気さくに返答した。
しかし派留は重い顔をして答えた。
『私、心臓が弱いんだ』
『そんなんじゃ人生つまんないだろ』
『…私を必要としてくれる人なんて、
いない。だからいつ死んでも良いんです』
その言葉を聞いた途端、直は
カーッと体中が熱くなり、布団
から起き上がり派留を殴った。
『なっ』
『死ぬとか簡単に言うな!じゃあ
お前何でここに入院してるんだよ!
生きたいからだろ!?』
『…っ』
頬を抑えながら涙ぐむ派留。
『あたしがダチになってやる』
光を放つ原石。まだ磨かれてはいない。
派留にとって直はそんな存在だった。
直は派留と居るうちに彼女の事情を知り、
心を痛めた。なんて可哀想な子なんだと。
派留は母親に遺伝されて心臓が
弱く、母親は派留を生んだ直後に
亡くなった。父親はそれでも
派留を一人育てようと決心した。
だけどやっぱり耐えられなくて、
ある日考え事をしている最中に車に
轢かれて亡くなったそうだ。
まだ5才だった派留は行くあてもなく、
お爺ちゃんの家に引き取られた。
それでも6才でお爺ちゃんは亡くなり、
行き場が無くなった派留は苦しさから
心臓に響き、死を争う体験をしたそうだ。
その辛い戦いのあと、派留の入院費を
どうするかで親戚に連絡が行った。
けれど、誰も負担しようとは言わない。
派留は絶望を覚え、自分が世界に必要と
されていないことを実感した。
ーそして引き取り先が決まるまで、
退院することができず今に至る…