「…ごめんな、香苗…」



言いながら、香苗の白い首筋に少し舌をはわせた後、ゆっくりと歯をたてた。



一瞬、香苗の顔が痛さにゆがむ。



「…あたしは大丈夫だよ。でも、血を飲みすぎないでね」



「ああ…。分かってる」



そして、香苗の甘くておいしい血をゆっくりと飲む。


一気に乾いていたのどが潤されていく。



俺は一生香苗と暮らしてくんだと思ってた。



こんな人の生き血を吸う吸血鬼なんて、女はみんな嫌がるだろ。


顔はイケメンだけどな。


素顔を知ったとたん、みんなスーッと離れてく。


ま、受け入れたとしても無駄だ。


だって本当に惚れた女にしか血を吸いたいと思わねぇからな。


こんなおれを受け入れられるのは香苗だけだ。


そう思ってた。




今の俺には、ならどうして今日2回会っただけの女を見て、こいつの血が欲しいと思ったのかなんて、頭には少しも残っていなかった。