「あ、そういえばね、本屋にいたとき、あたしの隣にいた女の子がいるでしょ?」
香苗が首をかしげて聞いてくる。
香苗は相当のチビだから、見上げないと俺を見れない。
その仕草も、俺は好きなんだけどな。
…本屋にいたとき、香苗の隣にいた女。
ああ、あいつか。
今朝、ぶつかったやつ。
一瞬目があったけど、俺は無視した。
俺と、香苗にとっては今日初めて会ったような女が、知り合いだって知ったら香苗がきっと悲しむ。
あの女にはわりぃけど、やっぱり俺は自分の女が優先だ。
「…ああ、いたな」
香苗の質問に、ぼんやりと俺は答える。
「その子もね、このポーチが可愛いって思ってたんだって」
嬉しそうに話す香苗。
そこって、喜ぶところなのか?
ま、香苗が嬉しそうにしてるからいいか。
「そうか。よかったな。お前、そいつの名前知ってんのか?」
言ったあとで、しまったと思った。
何聞いてんだ、俺は。