先に暖房が入っていて、コートを脱げる。
なんだかいい匂いもする。
俺は鼻をひくつかせた。
拓人が顔をのぞかせる。
「飯食った?」
……気持ち悪い……夫婦か!
そう思いつつも俺はコートをベッドの上に投げ出して、首を振った。
「酒飲んでただけなんだ。なに?カレー?」
「そうカレー。いいね~大学生、楽しそうで」
ご機嫌に皿にカレーをよそう後姿を見て、俺は何も言わなかった。
目の前に熱々のカレーがおかれて、ちょっとこの生活いいな、と思ってしまっている自分がいる。
「なんかさぁ……見た目によらず、マメだよな、拓人って……」
「そーか?」
「うん……」
気付いたら最初は不審者だと思ったこいつなんだか仲良くなってます、なんて言ったらアイツらは笑うだろう。
俺も意外だった。
まず同じ歳だと言うことが信じられない。
大分年上だと思ってずっと敬語だったし、
向こうも俺を年下だと思っていたらしいのだ。
それから少し俺も気が楽になった。
同じ歳ということは、いくらなんでも気合と年季の入ったヤクザとか、そうゆうことではないはずだ。
やっぱり、俺とは全然違う。
カレーを口に運びながらちらりと見ると、またニッと笑ってうまい?などと聞いてくる。
「なぁ」
「ん?」
「……3ヵ月経って、金たまったら。次はどこ行くんだよ?」
唐突だったのか、拓人は少し目をしばたかせて俺を見た。
拓人が家を放り出して1年もどこにいたのか。
海外にいたのだ。
少しずつ聞かせてくれた拓人の話は、なんだか俺には壮大で、浮世ばなれしていて、単純に『世界ウルルン滞在記』みたいだななんて、ひどくどうでもいい感想しか抱けなかった。