俺はもう就職も決まり、
卒論も提出して、
あとはこれまでのようになぁなぁに過ごしていたら大学卒業で、
嫌でも社会に出なくちゃならないんだ。
ちょうどそれまでの期間が3ヵ月。
少しくらい変わったことがあったって良さそうなものだと思っていたところだと、俺は何度も自分に言い聞かせている。
「帰る」
立ち上がった。
なんだかなぁ、最近気持ちよく酔えないんだ。
「ちょっ、晶ちゃーん、嘘だぞ!俺は君にムラッとなんかしてないぞ!」
必死で弁解しているアホな声を無視して、俺は家路についた。
……今日はもう帰ってるはずだ、あの男。
俺の家に住み着いたと思ったら、もう次の日にはアルバイトを3つ決めてきて、馬車馬のように働きだした。
朝早く出かけて、夜遅くに戻ってくる。
キツそうに思えるのだが、いつもあの笑顔を浮かべてなんの文句も言わなかった。
そうなってくると、親の仕送りで生活し、楽なバイトをして小遣い稼ぎをしている俺が文句を言えるはずもない。
それどころか奴は時間があると俺の飯まで作り、俺の洗濯物までやってくれる(相手はいかつい男だから、なんだか気持ち悪いと言ってしまえばそれまでだが)。
「……ただいま……」
「お、晶おかえりー」
すぐさま快活な彼の声が返ってきて、俺は出迎えてくれる人がいることが嬉しいやら、でも相手がこんなんかということにげんなりするような妙な気分を味わう。