***
「……え、それで晶、今その男と一緒に住んでんの?」
「……うん」
ビールの缶をかたむけて、俺は仏頂面で頷いた。
その場に居並ぶ友人たちはなんだか妙な顔をしている。
奴が俺の家に転がりこんで半月、いつもの友人の家で集まると、
俺はぶつぶつとあの男――拓人と名乗った――の話をしたのだった。
他人の話だったらこれほど物珍しい話もないだろう。
「なんだよ。バカだと思うだろ?笑いたきゃ笑えば」
空になった缶を投げ出すと、俺はカーペットの上にごろりと横になった。
「すげー怪しいよなぁ」
「晶ってそんなキャラだっけ?」
「いやーでも晶はなぁなぁに生きてっからなぁ。とうとう面倒ごとに巻き込まれたか」
俺は黙ったまま柿ピーを口に放り込んだ。
お前らだって、あいつに会って頼まれれば、断れないに違いない。
確かに俺はなぁなぁに生きているが、なんでも引き受けてしまうような奴じゃない。なのに、気がついたら承諾してしまっていた。
「……もしかしたら、そいつ、ホモかもよ」
1人が声をひそめて言う。
「……笑えねーよ。あんないかつい男に迫られたら俺抵抗しきる自信ねぇよ……」
俺が思いっきり嫌な顔をしてそう言うと、なんだか場が盛り上がってきていた。
「いやっ、わかんねぇよ!そのセンが一番濃くねぇ?」
「だよな!晶ちゃん顔綺麗だしさー、なんか弱そうだもんな!」
「わかるわかる、俺もたまに晶ちゃんにムラッとくるからね!」
「「えっ」」
流れる沈黙。
俺はうんざりして起き上がった。
「勘弁してくれよ……」
好き勝手なこと言いやがって。
たったの3ヵ月だ。あっと言う間だ、そんなもん。