「いや、君の言う“人の気配”が俺のことだよ」

「じゃあ一年間も自分の部屋ほっといてどこにいたんですか?一年間もいなかったって事は家賃も払ってなかったってことでしょ?そんなんあんたの家じゃなくなってるの当たり前でしょ?てゆうか一年間どこに住んでたんですか?いやそれよりもまずおかしいのは、赤の他人の俺の家でなんであんたはメシ食ってんだってことですよ!」


息が切れた。
わめくと頭にガンガン響く。

俺がこんなに血管切れそうになっているのに、この妙な男ときたら笑顔でなんでもするりと交わしていってしまうみたいだ。

馬鹿馬鹿しくなって、ため息をついた。


「……まったく、非常識にも程があるっつの」

「でも君は、その非常識な怪しい男を、部屋にあげてシャワーまで使わせてくれたろ?」

「…………」


絶句して口をつぐんだ。
確かにその通りだ。

俺が女だったらいくらなんでもこんな事はしないが、頭を深々とさげられて、俺はたいした拒否もせずに、はぁどうぞ、てなもんだったのだ。

いつから俺はこんなにお人好しになったんだ?


「ちゃんと事情は全部話すよ。お礼もするしね。そこで、親切な君に頼みごとがあるんだけど」


またニッコリ、だ。
このタイプの人間には会ったことがない。
俺じゃなくても相手がこいつなら、誰でもつい許してしまうじゃないだろうか?

俺は諦めた気になって、うなづいた。
もういくら面倒かけられようと同じようなモンだ。


「……なんスか?もうここまでくりゃいいっスよ。ま、大金とかあんたがヤバイ人だったりしたら無理っすよ?俺だって一応学生なんですから」

「……3ヵ月でいい。俺をここにおいてくんないかな?」

「…………」


開いた口がふさがらない。

そんな事を、俺は22年間生きてきて、初めて経験した。