2人で教室を出ようとすると、
同じクラスの女子たちが
声をかけて来た。

「橋野くん、もう帰るんだ?」
「やっぱり美雨と一緒なんだねー」

媚を売るような言い方ではない、
ただ単純に
私と帰ることに対して
羨ましいって感情が
込められている言い方だ。

「あ、うん。じゃまたな」

「なんかごめんね、ばいばい」

橋野は素っ気ない言葉だったけど
一応笑ってたから
女子たちも安心して手を振りかえした。

私は苦笑いして、
申し訳なさそうに。

「美雨ずるい!
あたしも家そっち方面だったらな」
「ちゃんと橋野くんのこと
お守りしてよね!」

そんな冗談を交えながら
女子たちは私に
決して悪意の目を向けることなく
友達に対してと同じ態度で
接してくれた。




「野口、待った?」

校門で野口を見つけた。

「おう葉山あんど橋野。
待ってないよ、今来たとこ」

「歩実さん、お久しぶり」

橋野が野口の荷物を取りながら言う。

私は胸がつんと痛むのを感じた。

「ほんと、
最近また体調崩してたからねー。
お見舞いに来た葉山にしか
会ってなかったね」

野口も当たり前のように
橋野に鞄を預ける。

「ごめん、俺ちょっと忙しくってさ。
お見舞い行きたかったんだけど…」

「いいの。
橋野には橋野のことがあるでしょ?
あたしのために
時間使わなくてもいいんだよ」

橋野の言葉を遮って、
野口が少し強い口調で言った。