野口は違うクラスだから、
途中で別れて自分の教室に入る。

みんな掃除で疲れたのか、
ほとんどが既に帰ったか
机に突っ伏しているか。


まあこの学校じゃ
サボりや早退、欠課など
あたりまえなんだけど。

だから保健室には
生徒がいつも入り浸っている。

教室で、同じクラスの
橋野を見つける。
まあ残っているのはほんの数人だから、
見つけるというのは
少しオーバーかもしれない。

橋野は1番後ろの机に座り、
後ろに備え付けてある本棚に
足をあげて本を読んでいた。

「橋野、ショートは?」

「ホームルーム? 多分無いんじゃね?
さっき、先生が来てさ
これだけしか残ってないのか。
って言って、どっか行ったよ」

声をかけると、そう言いながら
橋野は顔を上げ、本を閉じた。

「あ」

「ん?」

声を発してしまってなんとなく後悔。

「いや、栞…」

「ああ、別に…
これもう読んだことあったし。
暇潰しに飛ばし読み」

「そか」

「ん。…お前ってさ、
変なところで気い遣うよな」

笑いながら言われ、
そうかなとつぶやく。

しばらくの沈黙のあと、
帰ろっかと橋野が言って、
うんと頷いた。