「うへえ~疲れたあ」

体育の授業、終了のチャイムとともに
背中にもたれかかってくる野口。

今日はプール掃除だった。

「重いって馬鹿」

「えっ!?あたし体重48キロだよ!?」

いつも通り
オーバーリアクションな野口を
私はため息をつきながら
背中から引き剥がす。

「それ嫌味ですか。
私あんたより身長低くて
あんたより重いんですけど?」

「怒るな怒るな~」

「てか野口全然掃除してないでしょ!
私とかこんなに汚れたんだからね」

汚れや枯葉が付いた体操服を脱ぎながら
更衣室のドアを開ける。
どうやらタンクトップが見えたようで、
まだプールに残っていた男子に
茶化された。

「サービスよすぎだろ葉山!」
「吉田顔真っ赤だし~」
「お前も赤えよっ」

「はいはい」

そんな声を一蹴し中に入ると、
最後まできちんと掃除をした女子は
私たちだけだったようで
誰もいない更衣室には
香水と塩素の匂いの混じった
微妙な香りが残っているだけだ。

「もー…葉山は可愛いくせに
男に興味ないからねー!」

あまり汚れていない体操服を脱いで、
髪を拭きながら野口が言う。

「別に興味ないわけじゃなくてさ」

「そーなんだ?」

「ん」

「まあタンクトップ1つで
あんだけ興奮できる男子達には
興味湧くほうがおかしいかもねー」

「そーねー。
まあ最後まで残って掃除する分
いい奴らだと思うけどさっ」