首をかしげながら、あたしの頭を撫でる蓮。


そんな蓮に、キュッと胸が苦しくなる。


蓮の服の裾をつかみながら、下を向いた。


茶色い床が視界いっぱいに入る。


こうでもしないと、あたしの頭は蓮で洗脳されそうだ。


あたしが、蓮に言いたいことはたくさんある。


けど、伝わってほしいことはひとつだけだった。


さっき言いかけたけど、やっぱ言えなかった。


情けないなぁ。


「すき焼きっ!」


「すき焼き?」


「そう!美味しく作ろうね!」


パッと顔を上げて、にっこり笑った。