「やぁ人の子」


少年が近付くと、魔物が声をかけてきました。

かつてはその遠吠えを聞くだけで人々は震え上がったと少年は聴いていますが、今はまるで廃墟に吹く風のように、乾ききっていました。


「こんなところまで何の用できたのかね。
もしや私を哀れんで餌にでもなりにきたかい」


魔物の穏やかな、しかし恐ろしい言葉に、少年はぶんぶんと首を横に振ります。


「そうだろうなぁ」


魔物は愉快そうにくつくつと笑います。

まるで全てを諦めてしまっているような、そんな笑い方でした。