「ん〜?どしたの、みのりん」

「その人って… 七井つばさくんだよね?」

「お?何で俺の名前知ってんだ?」

「つばさくん!私のこと覚えてるでしょ?」

「何言ってるの、みのりん。」

「もしかして…篠原?」

「うん!!」

「ちょっとちょっと、どういう関係なの!?」

「いや…ただの」

「「幼なじみだよ」」

「そ、そうなんだ!」

キョトンとしている琴ちゃんは、私に耳打ちした。
(私、七井くん案外狙ってるかも)

(そうなのー?!いいと思う!性格は…多分良いし。)

(つーワケで、協力よろしくね!)

「二人して何しゃべってんだよ?」

琴ちゃんはつばさくんを気に入ってるみたい。
つばさくんと喋るのはほどほどにしとかなくちゃいけない、ってことだよね。 私にだって、空気は読めるよ!

「ん、じゃまた後でね!」

「はーい。」

簡易な言葉を交わして、席につくと大量の教科書や紙が机をかさばっていた。

「うわぁ…」
ため息をつきながら机の上にあるものを整頓していると、

「篠原!悪いけど、忘れてきた教材があるんでとりにいってくれる?」

もう………!なんか言い出したよ、この先生。

「えぇ…。」

「ごめんな、先生時間ないんだわ…手の空いてそうな子が篠原ぐらいしかおらんくてな。」

私以外にいっぱいいると思います。
「わかりましたよぉ…」

流石篠原やなぁ、する事が違うわ、と後ろで私を褒めちぎっている。

用意を終えてドアを開けて行く寸前に、会長が私に言った。

「俺も手伝う。つーか、教科書がどこにあるか知らねーだろ?」

「いや、いいです。一人でここを歩き回ってがんばります。」

「会長命令だ、美乃莉に何かあったら心配だからな。」
ふとある単語が気になった。 心配? 心配してくれるんだ、こんな人でも。
「俺は冷血じゃねーから!」
あ、もしかして心の中の一言が顔に出てたかもしれない。危ない危ない。

「んじゃ、案内よろしくお願いします。」

「はいよ。あ、そうそう」

「はい?」

「キス、あんた初めてだろ」

その瞬間、ちょっといい感じの人なんだなと思い始めていた私の心はすんなりと砕き散った。