どっ、どんな運命だよ!と突っ込みたくもなったがここはあえて抑えた。
っていうか琴ちゃんだけじゃなかったのだ、恍惚とした表情をしていた輩は。もちろん、自分の知り合いの中にもいたし、全然知らん人も顔を赤〜く染めていた。

なんか面白いなぁ…この図。
見る人見る人目がうっとりしっとりしている。キョロキョロと周りを見ていると、不意にあの色男がしゃべりだした。
「俺、酒井奏多は今年入った新入生です。」

ん?

「ですが、やる気なら人一倍あります。前のようなやる気のない生徒会長では話になりません、ですから今日から俺がこの職を務めることになりました。みなさん、どうぞよろしくお願いします。」

一年で生徒会長とか、やるなぁ、 相当人望厚かったのかな。
馬鹿な私は、新入生が生徒会長になれるわけがないことを考えたりはしなかった。

そしてなんとも懐かしいのは校長の話で、話の長さは小中高変わらないのだ。
入学式をひとまず終えて自分のクラスに誘導されると、もう一度名簿を見直した。 知ってる人、いるかなぁ? 軽い気持ちで見ていると、更なる追い打ちをかけられた。あの<酒井奏多>は、このクラスだったのだ。しかも前の席、あぁ最悪すぎる。 幸いだったのが私の後ろじゃなかったことだけ。
神様はどれだけ私を痛め付ければ気が済むのかな?

名簿の前でまたもや呆然と立っていると、諸悪の根源である酒井奏多が私に話し掛けてきた。
「おい。」

「…」

「おい。」

「……。」

「無視すんなって!」

なぁにが無視すんな、だ。無視されるような事したのはそっちでしょ!

「なぁ、美乃莉。機嫌直せって。」

名前呼び…。いつからそんな親密になったわけ?私は少なくとも許可してないのに。
「このまま無視すると…公開キスするぞ。」

「は?!」

「やっと喋った!」
ニカッと嬉しそうに笑った。
「…名前呼びは許可してませんけど」

「ホラ、俺生徒会長だろ?新入生の名前は全部覚えるのが御滝高校の伝統だからな。」

いや、それ関係ないって。それといきなりの名前呼びは絶対関係してないと思う。

「だからって…。」
抵抗の残る私は反論の意見を述べようとした。
すると…
「高校生活、真面目で素敵にすんだろ