多くの人が清々しい、と言うであろう朝。
残念ながら今の俺はそんなことが言えない。
寝汗がじっとりとしていて、首からは汗がたらたら、と流れ落ちる。
これは朝シャン確定か?
俺はいつも携帯のアラームで起きている。 時間を確認すると、またあのアドレスからメールが来ていた。
<気付いてないなら、今すぐ気付かせてやる。俺の女に手を出したら、お前の女がただじゃすまない。>

俺に女なんかいないし、こいつの女とか知ったことじゃない。 俺はそのメールを無視して、学校に向かったのだった。


いつも通り、澄んだ空気に少し湿気を含んだ朝はとても懐かしい気分にさせる。

−来週の日曜空いてますけど…
お?いきなり。この声…女?

−はぁい、分かってますよ。大丈夫です。他言無用、ですよね。

おいおい!どんな会話してんだよ。
俺はその話し主にバレないように、そっと電柱の後ろに隠れた。我ながらなんて適当な隠れ方なんだ!こんなんじゃすぐバレるじゃないか。

そう隠れた場所に不満を残すと、女らしきヤツは電話をやめた。 すると一瞬顔が見えかくれしたので、首を伸ばして見ると、
「あいつ…だったのか」

富永渚。
きっとあいつなんか悪いことやってそうだ。
そんな気がする。

「何、してるんですか。」

「っ!!!」

「おはようございます、奏多さん。」
にこり、と効果音がつきそうなくらいの微笑み。 皆はこんなやつに惚れるのか?
生憎俺はいきなり脅かされるのが嫌いなんだよ。ときめきなんて全然ないね。

「、見てましたか?」

「おう。ばっちり」

「流石は会長を務めることはありますね。その鋭さは嫌いじゃないです、よ?」

ゆっくりこっちに迫って来る。
その動作の一つ一つに、鳥肌が立つ。
 コイツ何考えてんだよ…?

「俺はお前が嫌いだ。」

「残念…少し狙ってたのになぁ…?」

「援交なんてやめとけよ?」

「私は援交なんて易しいものしてないです。」

ふふ、と冷たく言い放つと富永はそれじゃまた後で、と再びいつもの調子に戻った。

最近はほんとに物騒だ。