『守ってやる』
勢いで言ってしまったけれど、後悔はしていない。
俺はアイツに好意でも抱いてるのだろうか。
ハイキングに行く、とかなんちゃらかんちゃらクラスで話し合っているが、正直俺はそんなのに興味はない。
不意に耳に入ってきた、アイツの大きな声。
多少耳障りなのもあったが、ちょっとした遊び心で、『14席うるさいぞ』 といってみた。
彼女のことを久しぶりに口に出したからか、自然と笑みが零れる。
突然の指名にきょとんとした顔で、アイツにすいませんと言われたのでよろしいと返してやった。
俺とアイツのやりとりを、聞いていたクラスメートは大爆笑。
どこか笑えるところがあったのだろうか?
忘れ去られた菅が、いつの間にかチャイムと共に帰りのあいさつをしだしたので、一斉に皆はロッカーへ向かう。
その時。
後ろで栗色につやめく髪が、一瞬舞う。
アイツの異変に一番に気付いたと思った俺は、
「、大丈夫「大丈夫か?!」
気だるそうに言い放ってしまった俺の声は、しっかりとして頼もしい声を発した七井に掻き消される。
心底有り難そうに手をひいてもらうアイツは少し嬉しそうだった。
とくん。
心の中でふつふつと沸き上がる悔しさが、何故かとても不思議に思えた。
何せ、俺は女に嫉妬なんかしない。むしろ嫉妬させるほうが多いというのだから。
その後も、アイツから目を離すことはなかった。
部活中も。家に帰ってからも。
「だから、一体俺って何なんだよッー!」
ベッドに思いっきり倒れ込む。スプリングがこれ以上もないくらい軋み、その音が自分の心の軋みにも思えた。
これ以上考えても駄目だ。
もう今日は寝よう。
……やっぱり風呂くらいは入ったほうがいいか?
不意に、見知らぬアドからのメールが来た。
<俺の女に手をだすな>
はぁ?
まず俺女に手出してないし。
被害妄想もいい加減にしろ、って話なんだけどな。
ちょっと興味があったので、返事をしてみる事にした。
<<俺は女に手を出した覚えはない>>
送っても返事は帰ってこなかったのでシャワーを浴びて、俺はいつの間にか寝てしまった。