のに、今日は少し機嫌が悪い。

パパッと教科書を詰め込んだ琴ちゃんは、すぐに私の元に駆け寄る。

「一緒に帰ろー!!」
帰れることにとても興奮している。が…

「あれ、今日部活じゃなかったっけ?」

部活と気付いてきっとひどい顔になるんだろうなぁ。

「あぁあっ!!」
案の定、とても心地良い悲鳴を上げてくれたので、私としても少し微笑ましかった。
「早く行こ!遅れたら部長に怒られるよ〜」

「うう。休みと勘違いしちゃった」

私たちの所属する部活動、それはバスケット。
正直、やったことないから最初の内はとても不安だった。 だけど今ではこの部に入って、後悔はしてない。



『ねぇみのりんー!!』

『うーん?』

『部活バスケ入ろうよ!』

『何で?』

『七井くんがいるからに決まってるじゃーん!』

『そうですか〜』

『はーいーろーうーよ』

『えー。』

それでも、私はその時断る理由が無かった。 なぜなら、バスケには会長、酒井奏多がいるから。

『わかった。でもものすごくキツかったら考える』

『よっしゃー!』

それで、バスケの仮入部に見事ハマってしまい、ここに至る。

「どしたの、みのりん。行かないの?」

「あぁ、何でもない!早く行こ!」


体育館はキュッキュッと騒がしく走る音、重みのあるボールがバウンドする音でいっぱいだった。

「篠原と月岡!遅い!」

待ち構えていたのは女バスの顧問。
先輩達はというと、夏に向けてのキツイ練習に、汗を滝のように流しながら励んでいた。

「お前ら二人、外周5周してこい。」

「「はい」」

琴ちゃんの不安が混じった返事に、先生は何だという目で琴ちゃんを一瞥した。

「はい!」

もう一度威勢良く返事をすると、先生は先輩達の方に目を向けた。

「うぅ…やっぱこの人怖いよう。」

琴ちゃんはなるべく気付かれないよう、小さな声で呟いた。

「仕方ないね…まぁゆっくり走ろうか。」

「うん…!」

そんなかんやで私たちは無事走りきり、肩で息をしていたのである。

余力を振り絞り体育館に入ると、追い討ちをかけるかのように1年ボール拾い、との命令。