よし、琴ちゃんに聞こう。
なんでも知っている琴ちゃんは、私の世界の全てと断言できるのかもしれない。


「琴ちゃーん!聞きたいことあるんだけど…」

「いいよ。どうしたの?」


「急にがんばってねって言われたの」

「はぁ?」

「えと…ハイキングに行くことになって、会長はどんな反応なのかなぁって」
「ほうほう…もしかしてさ」

「なになに!?」

「なんもない(笑)」

親友にもはぐらかされ、私は見事にあしらわれていった。 今気付いたんだけど、こういうのってイジメじゃない?

「違うよー!!ただ、そういうのは自分が気付くのが一番だから…」

「気付けないよ〜…。富永さんも琴ちゃんも意地悪ーー」

子供が喚き立てるように、声のボリュームが一段と上がった私に辺りの冷ややかな視線がささる。 あぁ…やっちまった。

「おい、14席うるさいぞ」
この声は?そして14席とは?
にやりとした笑顔でこちらのほうを見た彼に、一瞬固まった。
会長だったからと、その対象が私だったから。

「あ、すみません」

「よろしい。」

がやがやしていた教室がシンとなり、このやりとりを聞いていた皆は大爆笑。
琴ちゃんまでもが涙を浮かべて笑っているので、よほどのことだったのだろうか。
爆笑が授業を渦巻いている中で、先生は呆れた表情をしていて少し申し訳ない気持ちになってしまったのは、きっと私だけ。
いつの間にかチャイムが鳴っており、先生はで帰る用意をして下さいと言い放った。
毎度のごとく一斉に椅子を引く音がクラスを包む。 その拍子に私はどっと疲れが体にのしかかり、宙に浮く感覚。

「っ?」

「だ、大丈夫か?」
とっさのことに驚きながらも、きちんと支えてくれたこの人は誰だろう。
顔をゆっくり見上げると、つばさくん。
−少し彼でないことにショックを受けたのは、秘密。

「あ、ありがと!!」

「おう。っていうか、変わってないよな。」

「何が?」

「急に立つとフラついてたまにこけるとこ!」

はいはい。ドジですいません…
「仕方ないじゃんー、ふらつくものはふらつくの!」
適当に会話を済ませ、スクバを取り出した。 いつもならるんるん気分で取りに行く