「でも…」
「まーさすがに10年だと俺も年とって
花ちゃん
振り向かせられるか自信ないけど
でも10年後も
俺は花ちゃんが好きだって自信はある。」
茶化すように笑ったけど
目の奥には真剣な思いが
宿っていることぐらい
私にだってわかる…
なんて声をかけたらいいかわからず
戸惑っていると
ピリリリリリリ
けたたましいピッチの音が鳴り響く。
「もー俺の告白タイムを…」
ぶつくさ言いながら
林先生は自分のピッチに出る。
「はい。あーはいはい。行きます。」
簡単に返事をしてピッチを切る。
きっと病棟からの呼び出しだろう。
少しホッとしてしまう。
「じゃー花ちゃんそういうことだから!
急患だってウソついてゴメンね!」
そういう先生はいつもの林先生だった。
呆然と立ち尽くしたまま
私は病棟へと歩いていく先生を見送った―