ヒナ
『………も…もしもし?…』





コウキ
「陽菜先輩?」





受話器から聞こえたのは





優しい…





光輝の声だった―――…










ヒナ
『………うん…』





コウキ
「さっき…
公園の近くの交差点で見掛けて…

声掛けようとしたんだけど
赤信号渡って車にクラクション
鳴らされてたよね?

…………何か…あったの?」





毎朝、走り込んでいた光輝に
偶然にも見られてたんだ…。





ヒナ
『………別に…何も…』





コウキ
「…そっかぁ………何か
ちょっと心配になっちゃって…

何も無いなら良いんだ…。


…ごめんね…
…じゃぁ切るね…。」










ヒナ
『………こ……光輝……』





コウキ
「………ん?…」










さっき起こった…



悪夢のような出来事を思い出し



心配して電話を掛けて来てくれた
優しい光輝の声を聞いて



全てを
話てしまいそうになる…










でも……





心配させたくなくて…


嫌われたくなくて…





溢れる涙を堪えながら





ヒナ
『………ごめんね…
…何でも無い…。


心配してくれて…
……………ありがと…』





―――…ガチャ





それだけ言うと陽菜から
電話を切った。