荷物の整理をしていた陽菜の手は
ピタリと止まり
ポツリポツリと話し始めた拓真の隣に
ゆっくりと座った。










タクシ
「親父の期待は…
俺から弟へと移った…。

母親も
“流雅は勉強あるから”
って…

それまで仲が良かった3人に…
〔溝〕みたいなものが
出来始めたよ…。


―――…その頃から

俺は勉強もしないで
遊んでばっかりだった…。

親父も母親も…
そんな俺の事は
他人みたいな感じで……

それでも親父は
世間の目があるから
俺を大学に入れた…。

まぁ〜俺からしたら
働かなくて済むし
都合が良かったけどね☆」





ヒナ
『………。』





膝の上に乗せてある拓真の手に
そっと自分の手を重ねる。





一瞬



陽菜に瞳を向けニコッとすると
再び視線を戻し





タクシ
「…友達と遊んでて
気付いちゃったんだよね…。

俺ん家が金持ってるから
遊びに誘うんだって……

そんな中―――…


颯太だけは違ってた…。



“金持ってんのは拓真の親だろ?

拓真は関係ねぇじゃん”



って笑いながら皆に言たんだ…。


―――…凄く嬉しかった。

だけど…


やっぱり彼女が出来ても…
俺ん家が金あるって知ってて
言い寄って来る女ばっかりで…

誰も信じられなくなったよ…。



だから……



俺の事を誰も知らない

夜の世界に行ったんだ――…」