タクシ
「少しは落ち着いた?」
ヒナ
『………うん…』
タクシ
「じゃぁ帰ろっか♪ハイッ☆」
立ち上がりながら言った拓真に
チラッと視線を向けると
ニコッと笑ったいつもの笑顔で
陽菜を見つめる瞳が眩しくて…
差し出された手に
自分の手を重ねると
ギュッと力一杯握り返してくれた
暖かい手を
“離したくない”
と思った…
―――――……
車に戻って
ワイパーに挟んである
1枚の紙に気付いた拓真は
―――…サッ
紙を取り
車に乗り込みながら見みると
―――…バタンッ
タクシ
「ホラ♪」
運転席に座り微笑みながら
助手席の陽菜へ渡されたその紙は
四つ織りに織られた
大学ノートの1ページを
破いた物で
陽菜がそっと目を通すと
一瞬にして
引いていた涙が再び戻って
視界を曇らせる。
―――――……
“陽菜チャン!
アイツが言った事なんて気にするなっ!”
“陽菜チャンの代わりに
殴っといたから☆”
“陽菜チャンには
俺らが付いてんぞ!”
“陽菜チャン…大丈夫?
心配だよ〜”
……―――――
実乃莉サン恵梨香サン
築サン颯太サンからのメッセージ…
タクシ
「だから言っただろ♪」
ヒナ
『……ウッ………拓…真……』
タクシ
「また泣いてるよ♪
本当に泣き虫だよなぁ〜☆」
抱き締めて
子供をあやすように
ヨシヨシと髪を撫でると
タクシ
「これで来週の沖縄旅行も
楽しく行けるかな♪」
ヒナ
『…ぅん……ありがと…』
拓真の唇に軽くキスをすると
殴られて切れた唇は
少し血の味がした…。