「あいつ…殺す」

「ほら、怒らないんでしょ?」

千景が俺のポケットから携帯をだし、運転手の番号にかける。

「もしもし?今すぐこれますか?」

千景が電話を切ると、外から


「お待たせしました」

と、運転手が来た

いや、全然待ってないよ。電話切って一分も経ってないよ。逆に早いよ

「後は車で話すから」

「…わかった」

俺は車に向かって歩く。ズキズキと痛む脚よりも元婚約者の方が気になって仕方ない

「…で?あいつとは本当に何もなかったんだな?」

俺が車の中で何度も訊くと、千景は軽くため息をつき、何度も

「当たり前でしょ?」

と、答えた


「それに、婚約者って言っても小学生の時だったし」

「あのさ…なんで婚約者になったんだ?」

「ん?あぁ…私の叔父にあたる人が社長で、その人が独身だから」

…?

俺は訳が分からないといった感じに首をかしげる

「普通、婚約者って社長同士の子供なんだろうけど、私の叔父は独身で、子供がいないから代わりに私を差し出したってわけ」

成程…