「なぁ」
俯いた俺に蜷川は声をかけてきた。
「昨日はごめん、あんなことするつもりじゃなかったんだ」
俺はそれを横目で見て目線をそらした。
「どうでもいいから、もう話しかけんな」
そらした顔が向いた方向は窓の外で、窓の外には青空が広がっていて、それがあまりにも手が届きそうで俺は焦燥感で胸を焼いた。自由になりたい。しがらみも何も誰とも繋がらなくていい場所で生きていきたい。
いや本当は分かってる。俺は、本当は求めてる。誰との繋がり。
「お前、なんであの時ホモなんていったんだ?」
蜷川は俺の返答を無視して聞いてきた。そういうことなら俺だって無視してやるだけだと俺は無視して空を眺め続けた。
「蓮見、お前本当は……男……なのか?」
俺はその言葉を聴いた瞬間固まった。誰にもいえなかったことに気付いてくれてうれしいような失敗したような気持ちになってどうしていいか分からず、ただ何も言えず俯いていると蜷川がにんまりと笑った。