僕と過ごした思い出が、いつまでも彼女を縛り付けて泣かせているのなら、
いっそのこと、もう僕のことなど忘れて欲しい。
そんな思いとは裏腹に、やっぱり忘れないで欲しいという願いが僕の中で存在する。
彼女はそんな僕の葛藤など知る由も無く、
軽い足取りで向い、其処で立ち止まった。
花屋だ。
少し小さな、正に女の子が好きそうな雰囲気の店で、
周りにはパンジーやチューリップなどが咲いている。
其処で彼女は数本のチューリップを購入し、
また先ほどと同様、軽い足取りで歩き出した。
チューリップの花言葉は、「恋の告白」。
彼女が僕に告白してきたときも、チューリップを持ってきていた。
まさかこんな現代社会で花言葉と共に告白だなんて呆れを覚えつつ、
なんだか此方の方が恥ずかしくなったのを覚えている。
だがそんな彼女の天然さにも惹かれていたのは事実だったので、
僕はその告白を受け入れた。