冬の終わり。
少しずつ風が暖かくなり、だんだん薄着になってゆく。
着崩した制服。春用ナチュラルメイク。
私には何もかもが面倒くさく感じられた。
「昨日、B組の佐藤辞めたらしいよ〜、絶対バカだよねー」
「私聞いたんだけど、どっかの教師とデキてたらしいよ〜。」
「それがバレたとか?どっちにしろバカじゃん!」
噂話に花を咲かせ、大声で笑う女子高生。
そんなカテゴリーに自分も入っていると思うと、軽く吐き気を起こしそうだった。
「香音は知ってた〜?」
パッと投げられた言葉のボール。興味も無ければ、一緒に騒ぐ気も無い。
出来れば関わりさえ持ちたくはない。
だけど私は、弱い人間だから。
「初耳〜。でも、バカ過ぎて言葉も出ない〜。」
「だよねー」
ゲラゲラと笑い声が響く教室。
目の前がどんどんモノクロに染まる。
カラフルな感情を持っていた自分が、次々に死んでいくのが分かった。
桜庭香音。
桜の咲く庭に香る音、でさくらばかのん。
こんなキレイな名前で生きてきた17年間。
そのキレイさとは裏腹に、私は自分を殺し汚し"私"を守ってきた。
そんな自分が大嫌いだった。
`