ゆっくり目を覚ますと日はくれ、1日を無駄にしたような気持ちが心を渦巻いた。


視線を時計に移すと7時30分だった。



ライブの時間…



キョロキョロと周りを見ると母さんは居なかった。





代わりにリビングのテーブルには手紙とラップのかかった野菜コロッケがあった。





野菜コロッケ、俺が…昔から好きなおかず…






隣にある手紙をゆっくり開くと母さんの達筆な字で文章が綴られていた。







「祐樹へ




あんまり気持ちよさそうに寝てたきに起こさず帰るよ。




冷蔵庫見たけど何も入っとらんかった。



コンビニ弁当だけだと栄養偏るろ。





夢追いかけるのもいいけど現実見た方がええが。



でも今しかできん事を精一杯やんさい。





父ちゃんは「戻って来い」ってうるさいが母ちゃんは応援すんろ。





あんたが有名な歌手になる事を。







野菜コロッケ食べんしゃい。祐樹、好きだったろ?

母ちゃんが出来る事これくらいじゃけ。




頑張り。母ちゃんより」







俺は鼻水たらしながらラップをはがして少しいびつな形の野菜コロッケをほうばった。





「っ美味しい…美味しいよ母さんッ…」






ジャガイモのせいで喉がつまりそうになったけど食べ続けた。






時計の針は8時を指そうとしてたけど野菜コロッケを食べる手と涙が止まらなかった。





Fin. .