華やかに彩る日々は突然、彼女の目の前だけ薄色に変えた。
それでも彼女が笑顔を絶やさなかったのは―……いや、これを言ったら涙が出そうだ。
今はまだその時じゃない。そう思っていたかった。ずっと。





ピリリッピリリッピリリッ
嫌な電子音が脳を刺激する。自分の腕の中に顔を埋めていた蒼は何かの振動に反応し眉を動かした。
目を閉じたまま体を動かそうとする。
そっと腕をずらすとそれに支えられていた頬が硬く冷たい感触に触れた。
「んっ……」

思わず声が漏れ、自然と目を開けた。
ぼやける視界にうっすらと平行線が見えると、はっとしたようにすぐ顔をあげる。
先程までうつ伏せていたテーブルの上で携帯がブルブルと身を震わせている。そしてチカッ、チカッ、と微かに光るランプ。何度も繰り返されるそれを見て、寝ぼけた思考を辿らせながら蒼は携帯を手に取った。

「―はい、もしもし」