「えっ?……じゃあここは……」

背筋がぞっとした。それぞれ別の階へ昇ってきたはずのエレベーターは何らかの原因で動きを止め、四人を鉢合わせるかのようにここへ連れてきた。一体ここは何階で自分達はどこにいるのか。普通なら今頃、エレベーター二台の同時故障で病棟は大騒ぎになっていてもおかしくないのに、監視センターからの反応は全くないときた。これでは外部との連絡は……
蒼はポケットから携帯を取り出そうとした。だが、その様子を見た真広が無言のまま首を横に振る。やはり電波は届いていないらしい。もはやこれはもうただの事故とも思えない。蒼は深く息を吐いた。


「この場所はどうなってる?」
エレベーターの正面は突き当たりで、真っ白な壁に覆われている。左右を確認しようと蒼はエレベーターから身を乗り出そうとした。しかし、それも真広の手によって阻止されてしまう。

「降りないほうがいい。そっちのエレベーターまで閉まったら、助かる手立てが……」

「……?」

詳しく話を聞くとどうやら志奈と真広がこの場に降りた時、二人を乗せていたエレベーターの扉は自動的に閉まりその後いくらボタンを押しても反応しなくなってしまったという。つまり真広が言うには、万が一運良くこのあと非常ボタンの回線が監視センターへ繋がる、もしくは席を離れていた管理人がふら~っと帰ってきてこの緊急事態に気付くということがあったとしても、両方のエレベーターが封鎖されてしまえば携帯電話が使用不可能なこの状況では完全に外部と連絡が取れなくなってしまう。そう考えると、蒼も彼女もむやみにエレベーターから降りることは出来ない。一方的に閉ざされてしまった道。残された選択肢はあと一体いくつある?

「どうすればいいんだこれから……」

小さく呟く蒼。このままここでじっとしている方が確かに安全だが、安心はできない。すると真広が手に持っていた携帯のわずかな光を薄暗闇に向けて言った。

「向こうに階段があるみたいなんだ」