まるで霧に包まれたように辺りが白くぼやけている。
誰かの声が聞こえる。段々とはっきり聞こえる。肩を支えられ起き上がる上半身と共に脳は目を覚ました。突如目の前に差し出されたのは、ずっと欲しがっていたワンピース。必要のない物だと分かっていても、どうしてもそれが欲しかった。

「今日は……これを……着る……んです……か?」

口角を微かに動かし伝わるか分からない声を振り絞ると相手ははっきりとした笑顔を向ける。
胸の奥がじんわりと温かみに満ちた。




旅立つ日~完全版