「もう、あのご老人の視力はほとんど失われているのでしょう」


桜を、見分けるだけの視力を失っていたのだ。

証拠に、白い杖を突いていた。


「どうして……」


老人の白濁した瞳、白内障を患っているのは明白だった。

しかし、白内障は手術をすれば視力を失うことはないはずだ。


「おそらく、緑内障を併発させていたのでしょう」


春樹が、淡々と告げる。