促されるままに別室へ移動し、手を青年に預ける。先ずは残っていたネイルを拭き取る作業から入り、次には掌、手の甲を丹念にマッサージして行く。

 それが何とも心地よくて、美知子は何度も意識を失いかけた。緑茶を飲んだ時と同じ香りが程よく彼女の神経を刺激する。まるで頭の中までマッサージされている気分だった。

「終わりましたよ」

「え」

 自分が今何処に居るのか解らなかった。辺りを見回し、目の前にいる青年と目があった事で、ようやく自分が居る場所を思い出した。

「え、あ……」

 彼女は自分の指先を見つめた。