『あの課長、三十代でまだ独身よ。それなりに貯金もあるらしいし、親の遺産も相当なものみたい。もしかしたら玉の輿? うわぁ、良いなぁ』

 里沙の言葉が思い起こされた。貯金のことも、ましてや親の遺産のことなど、美知子には知らないことだった。何故、里沙は知っていたのだろうか。ただの噂か、それとも。

 横山里沙と森山課長。

 美知子は会社へ出勤するのが待ち遠しかった。