『貴女の願いを叶えるネイルを提供します。貴女の望みは何ですか?』

 夢を叶える?
 女性客を釣る謳い文句かしら。

 美知子は一瞬躊躇したが、その看板が指し示す方向へと歩いて行った。ビルとビルの間の狭い隙間を通り、更に奥へと入る。予想外に閑散としていて、彼女はそれ以上進むのを躊躇した。

 本当にネイルサロンなんてあるのだろうか。
 そう不安になった時だった。

『願いを叶えるネイル屋』

 小綺麗な看板が目に入ってきた。

「願いを叶えるネイル屋……」

 ネイル屋とは何だろう。ネイルサロンではないのだろうか。

 店内に入るのを躊躇い、ふと、店の外のディスプレイに目をやった。きらびやかなネイルチップが並んでいる。

 白地に鮮やかな赤で花を咲かせているチップ。ブルーベースで人魚を思わせるような繊細なモチーフが描かれたチップ。かと思えば黒地に金色の蛇が絡み合うように描かれたチップと、バリエーション豊かな世界がそこには広がっていた。