第一、自分には達也が居る。まだ一回しかデートした事はないけれど、彼は確実に自分に興味を持ってくれている。課長と達也を天秤にかけるとすれば、勿論断然達也を取る。

 当たり前じゃないか、と彼女は目の前の自分に微笑みかけた。

 洗面所には今、誰も居ない。美知子は丹念に自分の顔を鏡に映して、角度を変えながら何度も確認した。

 少し痩せたかしら。

 ふふ。笑顔も素敵。完璧ね。

 美知子は一通り自分の顔を確認すると、トイレの個室へと入った。

 そうだ、課長の事を達也さんに相談してみよう。どんな反応を示してくれるだろうか。行くなと止めてくれるだろうか。

 美知子はクスリと笑った。

 今までに体験した事のないような高揚感がそこにはあった。二人の男が自分を求め、奪い合う。考えただけでもぞくぞくっと彼女の背中を擽った。