私が十和(とうわ)と出会ったのは、中学校1年生の春だった。
それは、部活動編成の日のことである。
私はいつも通り、帰りの会を終え、部活動編成会が行われる教室へ向かった。
1年生の女子剣道部員は、私一人だった。覚悟の上での入部だったが少し寂しかった。
教室へ入ると既に何人かの部員が席に着いて話をしている。
「1年生は、ここの列に座って。」部活動の部長長海先輩が言った。
私は示された席に行き、静かに編成会が開始されるのをまった。
前の席には2人の男子がいる。2人は、仲良く会話をしていた。どうやら、同じ小学校出身の幼なじみらしい。
私がぼーっとしていると、前にいた男子が話し掛けてきた。
「君の名前なんていうの?」話し掛けてきたのは、十和だった。
「長沼 波音(ながぬま はのん)です。宜しくお願いします。」私は、とっさにそう答えた。
「かわいい名前だね。」「おまえナンパしてんのか!」そう、すぐに隣の男子がツッコミを入れてきた。
「あぁ、ごめん。ナンパしている訳じゃないから大丈夫!僕の名前は草川 十和(くさかわ とうわ)。宜しくね。それで、こいつが神川 流夜(かみかわ りゅうや)。」
「宜しく!」
それからというもの、私たちの話は盛り上がり、あっという間に時間はすぎていった。


これが、十和と初めて出会った日のことである。
このときは、気づいていなかった。彼がこれから、どんなに大切な人になってゆくかなんて。
このときはまだ、知らなかったのである。