「詩織お嬢さん!
お見合いなんて、あんまりじゃねぇですか!……『若』は本気でお嬢さんの事を想っているんですよ!」
羽毛田は、てぃーだの制止を振り切って詩織と金田の居るお見合い会場に踏み込んでいった。
一体何が起きているのか事情がさっぱり分からない金田は、詩織に突然現れたこの男が誰なのか?と尋ねた。
「お騒がせして申し訳ありません。
この方は『関東竜神会』の新宿支部を預かる、若頭『藤堂竜也』さんの懐刀…『羽毛田鶴太郎』さんです!」
「関東竜神会だってぇ~!!」
金田は、詩織の説明に腰を抜かした。
…関東竜神会と言えば、この関東一帯を取り仕切る国内最大級の暴力団組織である。
今目の前に居るのが、関東竜神会の中でも特に武闘派として恐れられている新宿支部の若頭の懐刀だという。
「何故、暴力団が詩織さんの所になんか……」
そう言い掛けた金田の方を、羽毛田が迫力のある強面の表情でギロリと睨んだ。
やがて詩織が、悲しそうな表情で語りかけ始めた。
「竜也さんの事は、私だって愛しているわ……
だけど、竜也さんと私とは所詮は『ロミオとジュリエット』の関係……私は結局、親の決めた結婚相手としか結ばれる事が出来ない運命なのよ。
ああ…竜也さん……どうしてあなたは竜也さんなの!」
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